ペンギンの二度寝

アナログレコードをはじめた女。音楽や本、旅の記録

藤圭子に恋をして。

f:id:naco-7:20170611101442j:plain

1970年10月23日、渋谷公会堂で開催された藤圭子デビュー1周年記念リサイタルの模様を収めた「歌いつがれて25年 藤圭子 演歌を歌う」の中古LPが先日届きました。

前回新宿と吉祥寺で出会った70年代の歌姫たち。で書いたように大変な名盤と評判のものなので、これはちゃんと準備を整えて拝聴せねば!ということで仕事帰りに日本酒とするめを少々。「演歌」にマリアージュさせようとの目論見。まあ酒に燗は付けなかったしイカもあぶらなかったけど。ところがいざ盤に針を落として聴き入っていると、これは米の酒じゃない、バーボンだわと。Jack Daniel'sプリーズ!…つまり、藤圭子はブルースでした。曲調が演歌だろうがムード歌謡だろうが関係なく。

www.youtube.com

一曲目、暗闇の中から浮かび上がるように、「夢は夜ひらく」がはじまる。日本人形みたいに謎めいた美少女(当時19歳)が、こんなドスの効いたハスキーボイスでブルージーに歌っていたんだから、そりゃあ世間を騒がせるでしょうねぇ。娘の宇多田ヒカルが「遠く及ばぬわわ」とツイートしたように、この曲を含む一枚目のアルバムから二枚目と連続して37週オリコン一位という現代ではタイプミスか?と思っちゃうほどの大記録を打ち立ててます。しかしなんという母娘だ…。

 

www.musicvoice.jp

有楽町で逢いましょう」は本家フランク永井のムード歌謡的抒情とは違って湿度が低い。だけどサビの"ゆ〜うらくちょ〜おで…"の一節の絶妙な節回しだけでもその情感にため息が出ます。

 

www.youtube.com

「黒い花びら」は水原弘の曲で初恋の人を亡くした男の歌。大袈裟な詩的装飾が無く、特にサビには驚くほど普通の言葉しか並べていない永六輔の歌詞に、中村八大がつくる独特な哀調のメロディーラインが合わさる。その詩と曲が持つ不思議な魅力を藤圭子は……いや、とにかく聴いて頂きたい! 聴き込むほどにその成熟した表現力に参ってしまう絶唱です。

www.youtube.com

彼女のことは知識としては知っていてもまともに歌を聴いたことがなかったんですよね。40代半ばより若い人々や洋楽中心に聴いている人たちなんかも、こんなにすごい歌手がいたとは…って人が多いでしょう。じつにもったいない。特にブルースや70年代とかのロックが好きな人は気に入るんじゃないかなあ。

 

今回ご紹介のライブ盤は超おすすめなんだけど、中古LP以外だとCDボックスセットになっちゃうのよねぇ。全6枚に豪華ブックレットが付いて1万円+税。うーむ、人には勧めづらい…。

www.sonymusicshop.jp

ソニーミュージックさん、単品で出して頂けませんかねぇこの貴重な音楽遺産を。出来ればLP再発も所望。アナログプレイヤーが若い人にも売れてるから、ジャケットをセンス良く作って(アナログ使いの若者はおしゃれさんが多いからボックスセットのセンスだとキツいでしょう)上手くコマーシャルすればけっこう売れると思います。古くても上質なものを探し出すのが好きなタイプの若いコの琴線に触れるんじゃないかな~。上の世代の演歌・歌謡曲嫌いの方々だって、昭和フレーバーじゃない新たな衣装を着せた藤圭子を提示したら、興味を持って再評価する人も出てくるんじゃないかしら?

こんな名盤を懐メロという扱いにしておくのは罪ですからー!