ペンギンの二度寝

アナログレコードをはじめた女。音楽や本、旅の記録

DNAが反応する音楽。細胞が喜ぶ宝石。

先日、ティグラン・ハマシアン(Tigran Hamasyan)というピアニストの演奏を聴きに行ってきました。

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 彼はジャズに分類されてるようだけど、1つのジャンルに当てはめることが難しいミュージシャンです。私はまだ彼のことはよく知らないけれど、二年前たまたまタワーレコードの試聴コーナーでLuys i Luso」というアルバムを聴いてその場で引き込まれ、迷わず買ってしまいました。

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ティグランはアルメニア出身とのこと。調べるとアルメニア黒海カスピ海の間のコーカサス地域の国でその歴史は古く、旧約聖書の中でノアの方舟が漂着したといわれるアララト山は(現在はトルコ領だけれど)アルメニア民族の象徴の山とされていたり、歴史上はじめてキリスト教を国教と定めた国だということで、古いキリスト教の伝統が今に伝わっているんだそうです。

「Luys i Luso」はそういった伝統を持つアルメニアの宗教音楽を掘り下げ、聖歌隊の歌唱とティグランのピアノのみで構成された、透徹した美しさを持つアルバム。晴れた冬の朝はこれを聴きたくなります。

そして今年発売されたピアノソロ・アルバムAn Ancient Observer〜太古の観察者〜Amazon CAPTCHAは、ピアノとシンセサイザーと本人のボーカルから成る作品。

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今回の公演はこの新作の曲を中心に演奏されました。会場は音響が良いことで知られた築地の浜離宮朝日ホール

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ステージ中央にはグランドピアノとシンセ。演奏が始まると場内の照明は落とされ、いくつかのちいさな電球が曲に合わせて明滅するのみの演出。ティグランはTシャツ姿で弾いてるのに、まるで中世の仄暗い教会のミサか何かような、神秘的な雰囲気に陶然となってしまう。

新作の曲は「Luys i Luso」と比べると宗教音楽的な成分は少なく、ピアノのジャズ的なアプローチにシンセ、彼独特なハミングやヒューマン・ビートボックスも加わりとても現代的な作りになっているはずなのに、何故か、DNAに刻まれたはるか遠い時代の記憶を呼び覚まされる感覚がある。何なんでしょうねえ。日本や極東からほど遠い地域の音楽…ケルトやジプシーの音楽に、胸が痛くなるような懐かしさを感じてしまうことがあるけれど、それに似た心の震えがありました。

この日のライブは大盛況で、なんとアンコールが三回も!

ティグラン・ハマシアン、素晴らしい音楽家でした。

 

そんな文化的・芸術的感興の余韻は会場の外に出れば、わりと呆気なく消えてしまう運命でした。なぜならここは築地。うにと魚介のひつまぶし。宝石箱。

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ありがとう築地。文句のない夜でありました。

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