ペンギンの二度寝

アナログレコードをはじめた女。音楽や本、旅の記録

ムチノチのトリックスター

あけましておめでとうございます。
小正月も過ぎて今さらですが、ひとまず新年最初の投稿ということで…。

昨年のモットーはやってなかったことをやる!だったんですが、ここに書いていない初めてのコトで強烈な印象を受けたのが、お笑いのライブに行ったことでした。

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去年11月に行われたウーマンラッシュアワー村本大輔さんの独演会。ステージから放射されるエネルギーに圧倒され、次々繰り出されるマシンガントークに会場も爆笑の渦。終わった後は、まるで激しめロックバンドのライブ後のような爽快感。くせになるー。しまいには年末の有楽町の独演会まで参加しちゃったし。

 

そもそもの始まりは10月の衆院選のころのネット上の記事で。

www.huffingtonpost.jp


私は普段あまりTVを見ないので彼の事はよく知らなかったけど、視点や行動の起こし方が斬新で興味を持った。

 

僕らが、「自分は馬鹿だ」と言うことを自覚することから始まると思います。

「俺は知っている」という奴らがいるから、自分の無知を言いにくくなっているところがある。

お父さんが子どもに、「俺もわからないし、お前もわからないと思うから、政治の話、国の話を一緒にしてみないか」「みんなわからないから、みんな一緒に考えていこうよ」みたいなことを言わないと。政治を知ってるってウソをついてもダメです。

まさに哲学の租・ソクラテスの「無知の知」じゃないすか。


ネット上で政治の話になるととかくキツい言葉が飛び交うけど、私がその中でも良くないなあと思うのが、意見の異なる他者の人格までも攻撃することと「馬鹿か、お前そんなことも知らないのか」と罵ること。まあ政治ネタに限らずだけれども。
義務教育で教わったこともほとんど忘れてる人から専門家まで、政治や社会問題に対する知識レベルは様々。大人になるとどこまで知ってれば合格なのか…そもそもそんなラインは、あるようで無いのかもしれませんね。

 

私自身の無知をさらけ出しますと、私は経済学や金融についてはほんとに無知で。アベノミクスの「異次元の金融緩和」を理解するためには、信用創造準備預金制度などの基礎から学ばないといけなかった次第。高校でやったんだっけ? うーん記憶にございません…。

あ、ちなみにそんな基礎を理解するのに役立った本はコチラ。いろいろ勉強になりました↓

真説 経済・金融の仕組み 最近の政策論議、ここがオカシイ

真説 経済・金融の仕組み 最近の政策論議、ここがオカシイ

 

 

それですこし経済の知識がついた頃、日銀がマイナス金利政策の発表をした。中には個人の預金に適用されると勘違いする人もいるとの報道があって、私は「んなわけないじゃん〜」なんて苦笑いしたけれど、ひっそりと内なる優越感を持ってしまった自分に気付いて恥ずかしくなった。ついこないだ知ったばかりなのに何言ってんだワタシ。無知の知は紛失しやすいんだな…。

 

村本さんの話に戻ると、彼は衆院選の投票には行かなかったとTwitterで発表して炎上。その真意について上のインタビューで語っている。(ちなみに本当は投票に行っていたそうで、行ってないと言うことで人々はどんな反応をするのか実験をしたのだと後に告白している)


私は二十代前半以外の選挙はほとんど投票してきた。だから低すぎる投票率にはがっかりしつつも「私は社会人としての義務を果たしてるもんねー」というこれも密かな優越感を持っていたように思う。だけど村本さんの記事を読んだあと、私は無性に恥ずかしくなった。 

選挙の日、芸能人のツイッターをみたら「いまから投票行ってきます」「大人の証です」みたいなTweetがいっぱいありましたよね。あれを見て、どれだけの人が「私も投票にいこう」となるんだと。

やっぱり内側から変えないとダメなんですよ。(投票に)行った側の「行った」報告はいいんですよ。意識高いやつがどれだけ「勉強は大事だよ」「本は大事だよ」といったところで、本を読まないやつは読まないですよ。

正論をツイートするよりも、今回のように「行ってない」とツイートしたほうが関心を呼ぶと思うんですよね。僕と同じ人が半分近くいるわけだから。

 (中略)

――村本さんが投票に行かなかったのは、考えがあることが分かりました。でも、何も考えていない人や、面倒だとしか思っていない人も認めるんですか。
そういう人も、自分の権利というのを使ってほしいなと思いますけど、置いていきたくないです。だって、僕が政治のことを勉強しはじめたのは「たまたま」ですから。僕がお笑いやっているのもたまたま。意識高い人が、意識高いことに興味を持つって、単なる偶然なんですよ。
みんな、なんか「自分たちが勝ち得た権利」みたいな顔をして、政治の話をしてますよね。「インテリ層」になったのだって、たまたまなんですよ。その人とお笑いの話をしたら僕のほうが詳しいと思うし。海のことを漁師さんと話したら漁師さんが勝つ。

 

  (中略)

政治は、公立の学校みたいなもの。アホにも賢い奴にも「平等に教えろ」と思うんですよ。今は、国会や政治に普段から興味がある奴だけで決めている。

学校で言えば、職員室に勉強を聞きに来るやつだけの学校になってはいけない。体育館裏でタバコを吸っているやつにも、「この学校のことだから」と、しっかりと先生が言って教えてやらないと。

 

私の優越感めちゃめちゃショボかったわー。そして視点が浅かった。そもそも投票は義務じゃなくて権利なんだし。

こないだの衆院選は野党の分裂があったし、ネット上では様々なレベルでの熱い議論が交わされてるように見えた。私も今回は少々熱くなった。でも終わってみれば投票率は50%ちょい。結局いつも通り半分の人でわちゃわちゃやってただけなのか…と選挙速報を見ながら脱力してしまった。

これから国のあり方が大きく変わるかもしれない憲法改正国民投票が実施される可能性があるのに…

若い世代の投票率の低さが少子化などの問題を先送りし続けた要因だったのに…

 

このまえ池上彰さんがラジオで、"TV番組では政治を分かりやすく伝えることに努め、視聴者の皆さんがそれらの問題を深く考えるきっかけにして欲しいと思っていたけれど、どうも私の説明を聞いて理解した気になってしまって、その先を自分で考えることを阻害しているんじゃないか、と思うようになった" という感じのことを言っていた。
あの池上さんでも難儀してるのか〜、人に深く考えるきっかけを与えるってものすごく難しいことなんだなぁと思ってたところ、村本さんを思い出した。

村本さんは、かつて無関心だったころの自分のような人間にもっと政治に興味を持ってもらいたいと思って、あんなトリッキーな方法で問題提起したそう。それが成功してるのかは分からないけど、今までの知的な正攻法では届かなかった人々にもある程度、届いたんじゃないかなぁ。

さらにお笑い番組の中で社会風刺漫才を披露して大きな反響を呼び、元旦の「朝まで生テレビ」では安全保障問題について極論や明らかな間違いを含む発言をして大炎上。

 

…ほんとにもう、トリックスターじゃないですか…

kotobank.jp

 

彼の発言に対しては私も賛否両論あります。ドン引きする幼稚さを呈することもある。でも。無知の知トリックスターが繰り出す言動を長めのスパンで見ていると、整理整頓された文脈の集積で処理される前の、複雑さを抱えたままの世界の姿が見えてくる瞬間がある。これはなかなか得難い体験で、ついTwitterをのぞいてしまうんですよね。

 

 

いかんいかん、人から刺激を受けてばかりじゃなく自分も学ばねば。2018年はもっと勉強しようと決意し、電子書籍リーダーのKindle端末を購入したばかり。一年後に書く記事のレベルが向上しているよう、楽しみながら努力することを今年の目標の一つにしたく思います。

いきなり長々と書き連ねてしまいましたが、本年もよろしくお願いいたします。

 

 

プラタナスの枯葉舞う初冬、レコードは謳う。

一昨日、久々に渋谷のオーディオショールームStylus&Grooveさんのイベントにうかがいました。昨年立ち上げたばかりというフォノカートリッジのブランドPlatanus(プラタナス)の主宰者でデザイナー兼ビルダー、助廣哲也氏を招いてのMCカートリッジ「Platanus 2.0S」の試聴会とのことで、これは面白そうだと思い馳せ参じた次第。

platanus.tokyo

Stylus & Grooveさんの店内は相変わらずセンスが良くて気持ちの良い空間。少人数のアットホームな雰囲気で、コーヒーを頂きながらの試聴会でした。

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フォノカートリッジとは、レコードの音溝から針で音を拾って電気信号に変換するパーツ。カートリッジのクオリティは良い音でレコードを聴くためには超重要です。

www.audio-technica.co.jp

上位モデルのカートリッジはほぼ全てMC(ムービング・コイル)型という高音質なタイプなんだけど、普及機のMM(ムービング・マグネット)型と比べて量産が難しく、熟練工の手作業で一つずつしか作れないもの。

私も仕事柄その作業を知っているけど、職人さんは顕微鏡を覗きながら髪の毛より細いワイヤーを巻き付けたりはんだ付けしたり。ワイヤーを巻き終わったばかりのコイルはほんと小さくて、肉眼だとちょっと大きめの蚊みたいって思ったもんです。この作業が出来る人は日本でも数人しかいないとか!

プラタナスの助廣さんも三十代後半という(オーディオ業界では異例な)若さながらその一人で、エンジニアとしてメーカーで技術を磨き、数年前に独立してオリジナルブランドを立ち上げたとのこと。

ここ数年アナログブームだとは言え、先の見えないオーディオ業界。もの凄い熱意と勇気がなければ独立なんて出来ないよなぁと思ってたけれど、ご本人は気負ったところをまったく感じさせない穏やかな雰囲気の方。カートリッジからはどんな音色が出るんだろう?

試聴は、半年前の記事にも書いた(Zep「Presence」と新しいオーディオ店 @ 渋谷。) イベントでも聴いたレッド・ツェッペリンの7thアルバム「Presence」リイシュー盤の中の「For your life」からスタート。

www.youtube.com

ターンテーブルwell temperd、アンプはEAR、スピーカーはHARBETH で、タンテとアンプは前回とモデルが違ったりするけどおおむね同じ傾向の音と考えてよいかも。前回のカートリッジはGRADOだったかな。まあとりあえず音源が同じだと比較しやすいですな。

さてPlatanus 2.0Sの音色やいかに⁇ ご本人の風貌から、爽やかで軽やかな今風な音を勝手に想像しちゃったけれど…私の想像力貧しすぎ!

叩きつけるようなベースやバスドラ、ギター低音弦のソリッド感…このアルバム全体に漂う切迫感や、ゴリっとした70年代の空気感が圧をかけて迫ってきた。特に低音の厚みが凄い。 爽やかとかヌルい想像してスミマセン…。

その後いろいろなジャンルのLPを聴かせて頂きましたが、むやみに低音域が前に出るってわけじゃなくて、それぞれの音源の魅力を上手に引き出していると思う。アンプ等との組み合わせがうまくいってるのもあるかもだけど、現代的で日本的な優等生サウンドじゃなくて、躍動感がありながらもわずかに暗めで色気をはらんだトーンを感じる。

いいわあ〜。半年前にこのお店で購入したウチのスピーカーATC SCM10との相性が良さそう。いやいやMCカートリッジはまだ早いわよ私!高額だしMCトランスも買わなきゃだし、フォノアンプもアップグレードしなきゃだしね…

なんて脳内小競り合いをしつつ、お店に置いてある高音質レコードを物色。今まで買ったレコードとはだいぶ傾向が違うRadiohead(レディオヘッド)の傑作「KID A」に決定。

その場で試聴会のセッティングのまま聴かせてもらったら…うう、たまりません。電子音の重なりと無機的なトム・ヨークのボーカルに、こんなニュアンスがあったとは。

https://www.amazon.co.jp/KID-12-inch-Analog-RADIOHEAD/dp/B01F0XP984/ref=mb_oe_l

翌日、ウチのRegaちゃんに載っけて音量大きめで聴いてみました。うん、良い、良いよ、iPodで聴くのとは段違いよ…だけど昨日のあの深くて微妙なニュアンスは出せてないのよ…

ああもう耳ってほんとに贅沢で困るー。音楽を愛するみなさま、この魅惑的な沼においでませ!

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2017年のお気に入りCD、そして悩ましきオーディオ

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そろそろ冬がやってきますね〜。
6月に↑のアナログターンテーブルRega Planar3を購入してからというもの、家で音楽を聴くのはほとんどレコードだったけれど最近は若干休業ぎみ。それはこないだ買ったCDをヘビロテしてるからでして。ギタリスト笹久保伸の最新作「Guitarra」。

www.ahora-tyo.com


前々回の記事で書いた笹久保さんのライブの時に会場で買ったもので、これは今のところ私の今年買ったアルバム・ベストオブザイヤーですな。
全曲クラシックギターだけの笹久保さんソロ作。メインはアンデス民謡・フォルクローレを中心とした南米の音楽プラス彼のオリジナル曲。とても地味〜な内容をご想像されるかもしれないけど、まあその通りでしょう。Pops系が主食の人には物足りないだろうなぁという感じ。
おすすめしたいのは、ジミはジミでも音楽に"滋味"を求めてる方々。
ギターの深い音色が毛羽立った心の表面に水分を与え、しだいに奥深くに浸透して細胞一つ一つを修復していくように癒していく。あれ…私、疲れてたのかな…

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前にも書いたけど、彼の演奏はライブで見てても両手の指先がどう動いてその音が出てるのか分からない超絶技巧。だけど技に走ってる感は全く無いんですよね。
アンデスの伝統的な曲は普段聴き慣れたコード進行やメロディラインとは全然違うし、かといってそれを異国情緒だとかエキゾチックな魅力という風に感じるわけでもなくて。
伝統曲にも彼のオリジナル曲にも共通して感じるのは、純度の高さ。深い音色が有機的に結びつき、連なって、言葉や物語に翻訳することが出来ない感覚…高純度な"音楽の力"で成り立っている表現。こんなミュージシャンが現代ニッポンにも存在してるのが嬉しくなっちゃいます。

 

これはオーディオ好きの人にもお勧めできますよ。私が勤めるオーディオ関係の会社試聴室のシステムで聴いてみたところ、非常に塩梅がよろしかったです。筋金入りのオーディオマニアでもある先輩にも気に入って頂けて。録音にはアナログのマルチトラックテープレコーダーを使ったそうで、ハイレゾでもない普通のCDながら、アナログ的な深みのある自然な音色は一聴の価値があるでしょう。しかもそれが、今年録音の若いミュージシャンの作品だなんて、ワクワクしませんか⁇

↓「Guitarra」の曲じゃないけど、私が行ったライブの動画が上がってました。

youtu.be

 

 そういえば半年前に書いた記事(ようこそ、手強いスピーカーATC君! )で、買ったばかりのスピーカーATC SCM10が、アンプが非力なばっかりに本来のチカラを発揮できていない…とぼやいてましたが、実はしばらく前から新しくパワフルなヤツを導入してまして。

とある真空管アンプなんだけど、諸事情により詳細は書けませなんだ(苦笑)

ATC君の個性とも相まって非常に有機的な響きで鳴ってくれまして、笹久保さんのCDもより素晴らしく聴かせてくれております。

さてこれからの私の部屋の音をどうカスタムしようかな〜? スピーカースタンド、カートリッジ、フォノアンプ…と妄想は膨らみますが、お財布との相談は深刻です。ほんと耳はどんどん贅沢になる…困ったもんです…。

 

明日の総選挙

私はこのブログを始める時、書くことを避けるネタの一つは政治だなと思っていた。怖いから。面倒なことになるのが嫌だから。でも今日、書くことにしました。時間がないので手短かに。

今日の夕方、新宿での立憲民主党の街頭演説会に行ってきました。その名も「東京大作戦FINAL」。

 

今月のアタマに枝野幸男さんが新党を立ち上げた後、そのインタビューを読んだりYouTubeで演説を聞いたりして、これはようやく穏健な中道左派の政党が…積極的に支持できる政党が産まれたのかな?と思った。

「右でも左でもなく、下から。草の根から前へ」と繰り返すキャッチフレーズ、最初はただの選挙用の綺麗事でしょ、と思った。だけどこのインタビューなんかを読むと、あながちそうとは言えないなと。

www.ele-king.net

 

そして今日、街頭演説会に行って思いました。これは、枝野さんという政治家個人への熱狂ではない。ここに集まった人々はこの数年の、なんだか息苦しい空気が…政治についての自分の考えを発したりすると、やたら過激な言葉に出会うことになるからやめておこう…と思ってしまう空気が、おかしいと思っていたんだ。でも、だまっていたら社会がゆがむよね。だから書く。

 

あとこれ聴いてほしい↓

www.youtube.com

 

 

新しい出会い。フォルクローレ・ギターと秩父。

う〜、もう半月以上前のことで恐縮です。キッチンで料理をしながらInterFMピーター・バラカンさんの番組を聴いていたら、すごいミュージシャンというかアーティストを知ってしまった。

名前は笹久保伸(ささくぼ しん)、南米のフォルクローレ(アンデス音楽)を中心に演奏するギタリスト。ペルーに4年間留学して、当地のギタリストに弟子入りしたり各地の音楽を採集・研究したりしたそう。

shin-sasakubo.com

ペルーでもCDを発売して高く評価されてるらしい。帰国後は音楽活動のみならず、地元の埼玉県秩父を拠点に写真やアート作品作製に映画監督などなど、多彩な表現活動をしているそうです。

www.hmv.co.jp

ラジオで喋るその声は若く(33歳とのこと)、ああ今時の器用でクレバーなミュージシャンな感じかなと勝手に想像し包丁を動かしながら聴き流していたら、最新作CDからの音源とスタジオでの生演奏が。どれもギター一本のインスト曲。え、なにこのかんじ。耳が自然に一音一音を追ってしまう。これはもっと聴きたい!と思ったところ都内でのライブの告知が。よしゃっ。

 

ということでその数日後、代官山のライブハウス 代官山「晴れたら空に豆まいて」、通称晴れ豆に馳せ参じました。
ここは音が良いライブハウスとして有名で、普通PA機器では使われないアコースティック・リヴァイヴ( Acoustic Revive)というオーディオメーカーのケーブルを採用したりと音響さんが相当こだわっているそう。私はオーディオ関係の会社に勤務してるので前から興味があって、いつか聴きに行きたいなーと思っていたから良い機会です。

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良い雰囲気でしょう? ブエノスアイレスの路地裏のバーでワインを一杯…みたいな妄想をしながらも、この日の特別メニュー、秩父名物・豚みそ丼を平らげ、開演前から脳と五感のひとり遊びを堪能です。

そしていよいよ笹久保伸さんが登場、おもむろにギターを弾き始める。ナイロン弦の柔らかい音色がボディに共鳴し、軽やかでいて深い響きが自然に空間に満ちていく…ため息。

www.youtube.com


アンデスの音楽というと「コンドルは飛んでいく」しか知らなかったけど、そういう"雄大な山脈、遥かなる空"的なものとは違う響きがあるのね。なんと言うか…これはラジオで聴いた時にも感じたことだけど、もたれかかるような抒情…郷愁や旅情などの甘やかな感情を煽る成分は少ないのに、一音一音の響きの中に紛れもない"悲しみ"が含まれている気がする。涙にならない根源的な悲しみ、なのかな。

彼のオリジナル曲にも同じトーンが感じられる。これは伝統なのか彼の個性なのか。

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ラジオでも生演奏した「三つのワイノ」という曲では笛みたいな音が聴こえる。弦を擦ってる? それでなくても早くて超テクニカルな運指なので、どこからその音が出てるのかさっぱり分かりません。ペルーのアヤクーチョ地方の伝統的な曲をそのまま弾いてるらしいんだけど、番組の中でピーター・バラカンさんが「そのあたりにはこんなギターの達人が沢山いるの⁉︎」と驚いていたのが、目の前で見たらよーく分かりました。

↓違う曲だけど。

www.youtube.com

それにしてもこのハコの音、素晴らしいですね。最初の一音から「これがPA通した音⁉︎」とびっくり。スピーカーから音が出てるのに生音みたいに自然。こんなに繊細な音作りをするライブハウスはなかなかないでしょうね。ここでこの音楽を聴けることに心の中で感謝!


そしてとても気になっていた、秩父武甲山のお話。古くから信仰の対象であった石灰岩で出来た武甲山が、セメント採掘のために数十年来、毎日爆破され続けていると。環境問題のみならず、土地の歴史と信仰、産業などいろいろな観点から考え、アートという手法で表現しているそうです。

style.nikkei.com

 私は歴史や民俗学が好きなこともあって、ご本人のみならず秩父にも興味が出てきた。いやー、こんなスケールのでかいアーティストが現代の日本にもいたんですね!

すでにたくさんのCDを出されているから、少しずつ買っていこう♪ 

 

 

曼荼羅に撃ち抜かれた早春、そして秋になって。

最近季節の移り変わりがえらく乱暴だけれど、気持ちのいい秋がようやく主役になりましたね~。

 

私の友人にはものつくりをしている人がちらほらおりますが、その中で一人、ガラスのビーズを編んで小さな曼荼羅(マンダラ)を作っている人がいます。

私は十代の頃から仏教美術が好きで、曼荼羅も大好物。なので仏教特有のものだと思っていたけど、友人いわくマンダラという言葉は古代インドの仏教用語ながら、こういった構造のものは古今東西、自然界の中にもあるんだそうですね。↓友人のブログより。

ameblo.jp

友人は子供の頃から何故か曼荼羅に惹かれていたそうで、いつか自分でも作りたいという想いから、ビーズで創る方法に行き着いたとのこと。
図柄はチベットの伝統的なものを使いながらも、彼女が勉強していた色彩心理を応用した色遣いになっていて、宗教的な匂いはゼロ。曼荼羅について何も知らなくても魅力を感じられる美しい作品ばかり。↓のページで見ると分かると思います~。

www.creema.jp

"色"が人に及ぼす影響って結構大きいようで、特に女性はファッションやメイクでそれを実感している人も多いですよね。友人はそんな色の効果を利用して、情熱的な赤や心を浮き立たせるピンク、やすらぎの緑に冷静の青…などなどを組み合わせて、手のひらサイズの中に多彩な世界を創っています。

友人宅で作品や道具を見せてもらったんだけど、一口に赤と言っても様々な色合いがあって、それらを選びながら一粒一粒編みこんで…と気が遠くなる作業! すごいです…。
そんな曼荼羅をお部屋に飾ったり光に透かせてながめたりすることで、イライラしたり落ち込んだり、前向きになれなかったり…という心をサポートするものだということです。

ところで、ピンクって好きですか? 私は今までこの色には抵抗がありまして。一部の女性には分かっていただけますよね、ピンクへの複雑な心理。

素直に自分の女性性を受け入れられない、受け入れたくない、あるいは周囲が押し付ける女性観への反発…などなど。おそらく男性には理解しがたい心理だと思われますが、けっこう根が深いんですよ、これ。ピンクが嫌いなこと自体は何の問題もないけれど、それが心の中にある何かのねじれの表れだったりもして。
そんな私に、友人が今年の初めごろ突然、こんな素敵なピンクの曼荼羅をプレゼントしてくれてまして。

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これを一目見て「かわいい❤️」とキュンとしてしまったのは私の2017年10大事件の一つであります。ピンクを見てそんな気持ちになったのは初めてや~!


例えるなら、心の片隅で不貞腐れてゴロ寝しては缶ビールをぐびっといってる内なる小さいおっさんに、温かく美しい光が差し込んで「あなたはそんなおっさんライフを楽しんでいるようだけど、本当にそれで満足? もっと風通しが良くて明るい場所で、ドキドキワクワクしながら女のコなあなたを楽しみたいんじゃないの?」なんて耳元で囁かれて。
いつもなら「キラキラ女子みてぇなこと言ってんじゃねぇよ。こっちは酒とロックと文庫本でもありゃ十分なんだよ」なんてうそぶいてもう一本ビールをあけるトコだけど、この曼荼羅ちゃんの囁きはキューピッドの矢のように一瞬で胸を貫いてしまった。白旗を上げざるを得ない。内なるおっさんの着ぐるみの中には、ピンクの色鉛筆でお姫様のドレスを描いていた頃の小さい女の子がいたんだなぁ。

 

ameblo.jp

彼女が作る曼荼羅には、人はみんな光り輝いた美しい存在なんだよというメッセージを込めているそうで。部屋に曼荼羅を飾ってながめていると「私だって輝いてもいいんだよなぁ」なんて、素直に思えるから不思議です。

その後、春に40歳になったことも大きいけれど、今までの私の行動パターンと違うことを次々にやってみる事にしました。流行ってる服を買ってみたり、化粧に時間をかけるようにしたり、ブログを始めたり、レコードプレイヤーやスピーカーを買ったり…などなど。今のところそれで具体的に大きな変化が起きたとは言えないけど、ゆっくりと心の地殻変動が進行している感じ。

 

この小さな曼荼羅には大仰なメッセージ性があるわけでもなく、ましてや運気上昇などのおまじない的な効果がある訳ではないと思います。ささやかな光で心の片隅を照らして、自分では見えていなかった部分を気付かせてくれたり、そっと背中を押してくれたり。少なくとも私にはそんな風に感じられます。

私のこのブログもそんな流れから始めたはずなんだけど、過去の記事を読み返すと内なるおっさん着ぐるみが活躍してるな…。まあこれはこれで愛着があるし、一部が皮膚と同化してるようなので無理に引き剝がさず、内側のオンナノコとも仲良くやっていこうと思います~。

ある8月の午後、45回転のエイリアンズ。

たいへんお久しぶりでございます。気付いたらブログを一か月以上放置してしまった!

あれこれ書きたいこともたまってるのにどうしましょ。ともかく時系列とおりに書いていきますか…。

八月の半ば、友達を自宅に招待してレコード&CD鑑賞会を催しました。

前の記事(ハンドメイドインジャパンフェス)でご紹介したガラスアクセサリー作家の友人で、「最近限定発売された好きなミュージシャンのLPレコードを買っちゃったんだけどプレイヤーがないから聴けないんだよね〜」とのことなので、じゃあ我が家で聴かない?とお誘い申し上げまして。

今のオーディオシステムを組んでから初めてのお客さん。前夜から自家製サングリアを仕込んでお出迎え。友人はお花を持ってきてくれました。さすが友よ、きゅんとさせてくれるわ~。

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彼女が持って来たLPは↓

diskunion.net

キリンジ堀込泰行が、2000年に発表した名曲「エイリアンズ」を今年セルフカバーしたものだそうで。私はキリンジのことをほとんど知らなかったので、まず元歌をCDで聴いてから。この曲は今年LINEのCMで使われて話題になったらしいですね。

www.youtube.com

良い。メロウで乾いた叙情に引き込まれる。公団の屋根の上を旅客機が音もなく飛んでいく街、月の裏側を夢見る二人…不思議なメロディーラインから始まる堀込さんのヴォーカルが、寂しげで虚無的な風景の中に佇む恋人たちを描いていく。こんなロマンティシズムが存在するんだ…とため息が出ます。

 

そして本日のメイン、新しいLPをターンテーブルに載せて針を落としてみると、イントロの音色が暗く、ボーカルが入ったところで「あれ、これ声が変!」と友人。盤をよく見てみたら45回転盤とな⁉︎ えっと回転数変えるのどうやるんだっけ…

このターンテーブルREGAPlanar3 で45回転盤をかけるのが初めてだったわ。うーんやり方分からん。取説取説…スピンドルに引っ掛けるゴムベルトの位置をかけ変える…と。

多くのLPレコードは1分間に33と1/3回転するものだけど、45回転盤はそれよりも早く回転してます。速度が速い=同じ一秒間で比べると長い距離を進むことが出来る=盤に刻める情報量が多くなる=音が良い…という理屈で、音質にこだわるミュージシャンが45回転盤で出したりしてます。あと最近は過去の名盤を45回転盤で復刻とかも盛んなようで。まあ音の良し悪しは回転数だけじゃなくいろんな要因が関わってくるそうですが。

45回転盤の音質が良いという理屈、ちょっと分かりづらいかもなので、ベートーヴェンの「運命」を例に図にしてみました↓ 

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そんなこんなで45回転にセッティングしなおして「エイリアンズ Lover's version」に針を落としますよ。ちょっと試聴できますよ↓

堀込泰行「エイリアンズ(Lovers Version)」【レコチョク】1005451124

うー、これも良い…! レゲエ風アレンジになっててオリジナルより大人びた印象。そこはかとなく今の時代感が漂っているような気がします。

こういう素敵なLPをターンテーブルに載せて、軽めのお酒をかたむける夏の午後…たまらなく良いですな。女性の方々、お若い方々…レコードを聴く生活、いかがですか?

オーディオメーカー勤務の身として、業界の未来を心配してのレコメンドではあるんだけれど…でも、この楽しさが伝わったらいいんだけどなあ。

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